京王電鉄が2月22日に京王線ダイヤ改正を実施 ―京王ライナー、再び増発へ 井の頭線は実施せず―

f:id:plum_0417:20200127120623j:image

1月23日、京王電鉄より京王線ダイヤ改正についての発表がありました。改正日は、土休日ダイヤが2月22日(土)、平日ダイヤが2月25日(月)です。今回はその要点を見ていこうかと思います。

【平日ダイヤ】

①朝間上りの京王ライナーを増発

f:id:plum_0417:20200127120658j:image

朝の上りの京王ライナーについて、橋本発が2本、京王八王子発が1本増発されます。平日朝の上り列車は、特に途中駅からはかなりの数の利用者がいますから、実態に合わせた増発なのでしょうか。

ちなみに、改正後に新たに設定される、橋本発の「32号*1」は、橋本駅を5時45分に発車し、新宿駅に6時20分に到着するダイヤとなっていますが、それだけ早い時間から京王ライナーを運行するに足るほどの着席需要が、相模原線内から新宿方面への旅客流動においては存在するということなのでしょうか。

また、今回においても新宿駅8時台着の京王ライナーは設定されていません。既存の列車だけでも線路容量がひっ迫している現状を見るに、走らせたくても走らせようがないということは自明ではありますが。

②夕夜間下りの京王ライナーを増発、一部時刻変更

夕夜間の下りの京王ライナーについても、京王八王子行きが2本(17時00分発と18時00分発)、橋本行きが2本(16時40分発と17時40分発)増発されます。いずれも夕夜間の帰宅ラッシュ向けの列車です。17時00分発の京王八王子行きと16時40分発の橋本行きについては、1月14日から1月31日にかけて「時差Biz号」として運転された臨時列車とほぼ同じ列車となっています。

時差Biz号には1度乗車したことがありますが、確かに直前になって告知された臨時列車であり、そもそも1度しか乗車していないので、それだけでは判断しがたいとはいえ、定期列車化して走らせるべきなのか正直疑わしい乗車率であったことも事実です。あと1時間遅ければ利用者が増えるのではと考えていましたが、今回の改正においてはほぼそのまま1時間後の列車も設定されており、そちらに関してはそれなりの乗車率となる列車になるのではないかとは思います。

なお、帰宅ラッシュのピーク時間帯に当たるであろう19時台への京王ライナーの運行は、今回のダイヤ改正でも見送られています。朝8時台の上り同様、他の列車の本数や列車間隔、所要時間などに与える影響が大きく、それゆえに見送られたと見ることができます。

また、20時台〜23時台において、毎時30分となっていた橋本行きの京王ライナーの新宿での発車時刻が毎時20分に変更されました。16時台・17時台の発車時刻は毎時40分、20時台以降は毎時20分となっています。なお、平日ダイヤにおける京王八王子行きの京王ライナーの新宿の発車時刻は特には変更されておらず、17時台以降すべての列車が毎時00分に新宿を発車します。

③朝間上りにおける列車種別・始発駅の変更

朝間上りにおいて、京王八王子発新宿行きの準特急が急行からの種別変更により新たに設定されたほか、つつじヶ丘発本八幡行きの快速*2が列車の始発駅を変更する形で設定されました。より快適な通勤・通学をサポートするとした改正の狙いに合わせた施策のうち、京王ライナー増発に加えたものと言えるものです。

前者のような、急行列車を準特急列車に変更するという手法は、近年のダイヤ改正においては朝間上り列車の速達性向上策としてよく用いられるものです。今回増発される準特急列車においては、京王八王子~新宿間の所要時間が54分となっており、改正前のダイヤにおいて同区間の同時間帯の急行列車の所要時間が58分~60分、改正後においては60分~63分となっているところを見るに、準特急化によりわずかながら所要時間の短縮が図られているといっても良いのでしょうか。

高尾線の始発時刻の繰り上げ・終電時刻の繰り下げ

高尾からの高尾線の始発列車の時刻が約20分繰り上げられ、また高尾までの最終電車の時刻も約15分繰り下げられます。

まずは始発列車について見ていきます。改正前のダイヤにおいては、高尾5時9分発の各駅停車北野行き(高尾山口始発)に乗車すると、北野で京王八王子始発の準特急新宿行き(北野駅5時22分発、高幡不動まで各駅停車として運転)に乗り換えることができ、新宿には6時03分に到着することができるダイヤとなっています。これが、改正後のダイヤにおいては、高尾4時49分発の各駅停車新宿行き(高尾始発)に乗車すると、北野で京王八王子始発の特急新宿行き(北野駅5時04分発、全区間で特急運転)に乗り換えることができ、新宿には5時41分に到着することができるダイヤに変更されます。今までより20分早く出る電車で、今までより22分早く新宿に到着できるようになります。

続いて最終列車について見ていきます。改正前のダイヤにおいては、24時08分新宿発の特急京王八王子行きに乗車すると、北野で各駅停車高尾山口行き(新宿始発、北野24時46分発)に乗り換えることができ、高尾に24時53分に到着するダイヤになっています。これが改正後のダイヤにおいては、24時21分発の準特急京王八王子行き(高幡不動から各駅停車京王八王子行き)に乗車すると、北野で各駅停車高尾行き(北野始発、北野1時2分発)に乗車することができ、高尾に1時11分に到着するダイヤに変更されました。今までより13分遅く出る電車で、高尾まではたどり着くことができるダイヤになりました。

一方で、高尾山口までの最終電車については、新宿24時01分発の準特急京王八王子行き(高幡不動から各駅停車京王八王子行き)に乗車し、北野(24時43分着)で各駅停車高尾山口行き(新宿始発、北野発車時刻は改正前から変更なし)に乗り換えるというルートが最終列車となっています。改正前の新宿から高尾山口への最終列車は24時08分発の特急京王八王子行きであったため、ダイヤ改正により終電の時刻が7分繰り上げられたということになります。

⑤23時台の特急・準特急列車の減便

改正前のダイヤにおいて、平日23時台の下り方面には、特急列車が1本(新宿を19分に発車)と準特急列車が4本(新宿を07分、31分、42分、53分に発車)の合計5本が運行されています。これがダイヤ改正において運転本数が見直され、特急列車が1本(新宿を14分に発車)と準特急列車が3本(新宿を01分、26分、45分に発車)の合計4本に減便されます。利用状況に合わせた変更ということですが、例えば年末の忘年会シーズンなどの多客期に対応しきれるのか、以前運行されていた臨時列車*3がまた設定されることになるのか、そのあたりは気になるところです。

⑥日中(11時~14時ごろ)の相模原線の運行形態の変更

日中の11時台ごろから14時台ごろにかけて、橋本発着の準特急について、上下ともに京王多摩センター~橋本間を各駅停車として運行するように変更されます。

時刻表上の所要時間について、ダイヤ改正の前後で比較してみます。新宿からの所要時間は、改正前は南大沢までが34分、橋本までが38分となっていますが、改正後は南大沢までが36分、橋本までが41分になります。新宿までの所要時間は、改正前は橋本からが39分、南大沢からが35分ですが、改正後は橋本からが42分、南大沢からが37分になります。停車駅の増加に伴い、所要時間が2~3分伸びることになります。

また、京王多摩センターで接続していた都営新宿線からの区間急行が京王多摩センターで折り返すように変更されました。京王多摩センター止まりとなった区間急行も、準特急から種別変更される各駅停車に接続するようになるため、京王多摩センターを境にした準特急通過駅間の本数は改正前と同じ本数を維持していますが、乗り換えを伴う形となっています。

⑦夕夜間における一部準特急列車の列車種別格上げ(特急列車化)と形態変更

夕夜間の下り列車において、一部の準特急列車が、新宿の発車時刻を前倒ししたうえで種別を特急に変更され、終点まで先に到着するようになりました。改正前のダイヤにおいて、19時台~22時台に毎時54分~56分に発車する準特急京王八王子行きは、調布駅にて京王ライナーの通過待ちを行っていました。これらについて、新宿駅の発車時刻が毎時47~52分へと前倒され、また列車種別が特急へと変更されました。加えて、従来行われてきた調布駅における京王ライナーの通過待ちが取りやめられ、終点まで先に到着するようになります。

なお、改正前のダイヤにおける21時56分新宿発の準特急京王八王子行きは、上記の変更に加え行先を高尾山口に変更され、また高幡不動から先は各駅停車として運転するようになります。また、高幡不動からの区間を各駅停車として運転していた、改正前のダイヤにおける22時54分発の準特急京王八王子行きについては、改正を経て種別が特急へと変更された後でも、高幡不動において各駅停車へと種別を変更するという運行形態が維持されます。

京王ライナーの運行が始まった、2018年2月22日のダイヤ改正において、20時台以降の京王線下り方面では、特急列車が準特急列車へと置き換えられ、一部の列車においては、先に述べたように調布駅において京王ライナーの通過待ちをするようになりました。このことは、準特急列車の利用者にとって心理的には決して良いものではないことは想像するに容易いことであり、京王ライナーの運行開始からちょうど2年となる今回の改正において、ようやく是正されたとみてよいのでしょうか。

なお、改正前のダイヤにおいて、一部の急行橋本行きが調布駅で京王ライナーの通過待ちを行うという運行形態は維持されます。

【休日ダイヤ】

①京王ライナーの運転本数変更

休日ダイヤにおいても京王ライナーの運転本数が変更されています。

まず、23時00分発の橋本行きの京王ライナーが増発されています。改正前のダイヤでは、毎時00分発の京王ライナーは全て京王八王子行きでしたが、休日ダイヤにおいて今回増発された列車は、00分発の列車でありながら橋本行きとなります。

一方で、朝の上りの京王ライナーについては、運行時間帯と列車本数が見直されました。列車本数について、改正前のダイヤにおいては、橋本発が2本、京王八王子発が1本運転されていましたが、改正後はそれぞれ1本ずつの運行に減便されます。運行時間帯について、新宿駅到着時刻で比較すると、改正前は8時49分着(橋本発)、9時28分着(京王八王子発)、10時09分着(橋本発)でしたが、改正後は7時50分着(橋本発)と8時09分着(京王八王子発)となり、ダイヤ改正により、従来は比較的遅めの時間帯に運行されていたものが、改正後は運行時間帯が早められ、平日朝ラッシュにおける混雑のピークの時間帯に相当する時間帯へと変更されました。

なお、平日⑦で取り上げたような、夕夜間の下り方面における列車種別・運行形態の変更は、休日ダイヤでは行われていないようです。

高尾線の始発時刻の繰り上げ・終電時刻の繰り下げ

平日ダイヤ同様、休日ダイヤにおいても、高尾からの始発列車の時刻が繰り上げと高尾までの最終列車の時刻が繰り下げられます。始発列車・最終列車とも、新宿と高尾で乗り降りする時間は平日ダイヤと大きく変わりませんが、平日ダイヤとは種別が一部違っているところもあります。

井の頭線について】

今回のダイヤ改正京王線のみで、井の頭線ではダイヤ改正は行われません。ただし、京王線の列車の時間が変わっているところがあるため、明大前駅における乗り換えに少し変化があるものと考えられます。

◎「列車のダイヤ」は「商品」

今回の京王線ダイヤ改正は、京王ライナーの増発と高尾線の始発繰り上げ・終電繰り下げが目玉として掲げられてはいるものの、全体として利用状況に合わせた列車の種別・行先・運行時間などの見直しが目立つダイヤ改正と言えるでしょう。夜間帯に新たに多く設定された「高尾行き」の列車や一部の相模原線準特急京王多摩センター以西各駅停車化などは、その見直しの中でも特に目立って見えるものと言えるでしょう。

鉄道会社の鉄道事業において、「列車のダイヤ」は「商品」であるといえるでしょう。あくまで素人の考えですが、鉄道会社はより便利でかつ快適に利用できるダイヤを組み、それにより列車を運行することによって、より多くの利用者から運賃収入を得て、それをさらなる利便性向上に向けた投資へとつなげていくことが求められているものと考えます。

京王電鉄の場合においては、今回のダイヤ改正において、「より良い商品」と言えるダイヤを組み、それに基づくサービスを提供することにより、利用者を増やしてそれを運賃収入の増加へとつなげ、将来の投資へとそれを回すということが考えられるでしょう。ここでいう「将来の投資」とは、現在進められている笹塚~仙川間の連続立体交差事業(高架化事業)と、それに伴う列車の増発や所要時間短縮*4に必要な設備投資、駅へのホームドアの設置などといった鉄道事業における投資や、事業区間の駅周辺における再開発事業や新宿駅周辺で計画されている大規模開発事業などの沿線開発事業への投資が挙げられます。それらの投資によってまた利益を上げることができれば、利用者にとってより良い鉄道路線となるような投資や施策へとつなげられるはずです。

ただ、より便利でかつ快適な鉄道を目指そうにも、それにはやはり限度があることも事実です。 列車を増発して混雑を解消しようとしても、それに伴い列車の運行に必要な乗務員の数も増えるため、乗務員の人員数を増やしたり、あるいは乗務員のシフトを変更し、1人当たりの仕事量を増やしたりするようなことも必要になるでしょう。あるいは、列車の運行時間帯の延長を実施しようにも、それに伴って乗務員や駅係員などの労働時間は伸びるため、手当などによる人件費の増加なども考えうることです。鉄道会社にとって、積極的かつ拡大志向の施策や投資に打って出ることは、増収増益をもたらすことにより、更なる成長へとつなげることが期待できるというものであるだけではなく、要員数や人件費の増加や負担増に関する労使間の交渉など、実施に当たっての課題も出てくることであると考えられます。

時間の都合上、今回はここまでとさせていただきます。次回以降、1つ1つの項目について、時間などが許す限り、細かく見ていきたいところです。今回もお読みいただきありがとうございました。

 

(写真は筆者が撮影)

今回のダイヤ改正の特設ページ

 

www.keio.co.jp

今回のダイヤ改正のプレスリリース

https://www.keio.co.jp/news/update/news_release/news_release2019/nr200123_timetable20200222.pdf

ダイヤ改正前後の時刻表はこちらのページより。列車ごとの時刻表はスマートフォン版のページでは見られないため、PCサイトにアクセスしてください。

www.keio.co.jp

*1:現行のダイヤにおける「32号」は時間を一部変更の上「34号」として運転

*2:新線新宿から先都営新宿線内は各駅停車

*3:かつては忘年会シーズンには臨時の特急などが下り方面に複数本運転されていた

*4:高架化事業完成後には明大前駅千歳烏山駅に退避設備新たに設けられるため、列車の増発や所要時間の短縮が可能となる。また、踏切の除却や曲線の緩和などによって保安性も向上するため、列車の最高速度も引き上げられることが考えられる。