【乗ってみた】マツダ CX-30 実際のところ「クロスオーバーSUV」ってどうなの?

決して忘れ去っていたわけではないのですが、7月以来の更新です。平日は労働、休日はお出かけに溶かしていた結果、8月はそれ以外の時間はほぼありませんでした。

休日の楽しみとして「借り物として借りられる車で面白そうなものでドライブする」というものがありまして、これまでも”ちょっと気になる車”を借りて乗るということを何度かやってきたわけであります。

plumroom-0417.hatenablog.com

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「イチダイダケナンテエラベナイヨー」ということで、面白そうな車をつまみ食いしつつ、その雑感を備忘録としてまとめてきているわけです。万が一買うことになった場合のためのデータ取り兼ただの趣味という感じですね。なのでスポーツカーよりも実用的な車がメインになっています。今のところ2ドアはゼロです。

そんな感覚で選んで今回乗ったのがマツダクロスオーバーSUVのCX-30です。2019年に発売された同車ですが、タイムズカーシェアに配備され始めたようで、試しに借りてみました。

www.mazda.co.jp

マツダ・CX-30は、MAZDA3をベースとしたクロスオーバーSUV、最近人気の乗用車ベースのSUVです。日本車で同じカテゴリに属する車としては、トヨタ・カローラクロスやスバル・XV、またホンダが来年発売すると発表しているZR-Vなどが挙げられます。いずれの車種もカローラインプレッサシビックなどの車種をベースとしており、カローラクロスは納期が半年以上となるくらいにカローラシリーズの中でも一番人気となっていたり、スバルは(XV改め)クロストレックをベースとなるインプレッサを差し置いて発表したりするなど*1、各社が力を入れているカテゴリになります。

CX-30も外見上はベースとなるMAZDA3にほぼそっくり。最新世代のMAZDAのデザインのテイストをちりばめたものになっています。クロスオーバーSUVと言えば、タイヤハウス周りに黒い樹脂パーツなどを付けることにより、高い悪路走破性を持ちそうな外見上の演出がなされる場合が多いのですが、CX-30はそうした演出は希薄です。トヨタ・ハリアーホンダ・ヴェゼルと同じ路線でしょう。「速く走れるわけじゃないけどおしゃれなスニーカー」とでも言えばいいのかもしれません。

搭載されるエンジンは2Lのガソリンエンジンに1.8Lのディーゼルエンジン、そして圧縮着火型の高圧縮比ガソリンエンジンにモーターを組み合わせた「e-SKYACTIV X」の3種類です。組み合わされるトランスミッションは、基本的には6速ATで、2Lガソリン車とディーゼル車には6速MTの設定もあります。なお、2022年8月のマイナーチェンジにおいて、2Lガソリン車のエンジンは、「e-SKYACTIV G」と呼ばれるマイルドハイブリッドに変更されました。

全長4,395㎜×全幅1,795㎜×全高1,540㎜というサイズは、決して小さいわけではないものの、取り回しに苦労するものではありません。SUVとしては全高が低く抑えられており、機械式駐車場でも入庫不可というところに出くわす可能性も低くなりそうです。全幅はMAZDA3と同値で、これは実質的な先代モデルにあたる最終型のアクセラとも同じ数値になっています。車の肥大化は色々なメーカーで見られる傾向ではありますが、先代モデルとほぼ同じサイズに留めているということは、狭隘路の多い日本では歓迎されるべきポイントであると考えます。

インテリアのデザインはMAZDA3と全く同じと言っていいはずです。シンプルではあれど上質なものになっています。ナビ機能も備えたディスプレイはタッチパネル式ではなく、シフトレバーの隣にあるダイヤルやボタンで操作するものになっています。電動パーキングブレーキやブレーキホールドのスイッチ類等もまとめられています。また、ドリンクホルダーも備わっていますが、こちらは横方向に配置されており、運転席と助手席で飲み物を取り違えるということも少なく済みそうです。

フロントにはコンソールボックスも兼ねたアームレストが備わっています。カーオーディオの主役がカセットテープやCDなどだった時代には、ここに各種媒体がぎっしりと収まっていたはずですが、それらは今やスマートフォン等に置き換わっており、財布などを入れるスペースとして使われるケースが多くなっているものと思われます。USB等の差込口がコンソールボックス内に配置されており、オーディオとの有線接続や充電にはこちらを使うことになりそうです。

後席の空間も広く取られており、レッグルームもヘッドクリアランスも身長173cmの私が丁度いいドライブポジションを取った状態で座っても窮屈さを感じませんでした。エアコンの吹き出し口が後席足元にも備わっていたり、ドリンクホルダー付きのアームレストも後席中央についていたりするなど、後席の居住性は十分高いと言えます。

荷室空間も十分な広さとなっており、日ごろの買い物から旅行まで、そつなくこなせそうです。トノカバーも装備されていて、積荷が外から見えないようにもなっています。開口部の下端部と荷室の床に段差があるようにも見えますが、地上高が高すぎる車ではないため、荷物の積み下ろしに困るということもあまりなさそうです。

戸塚駅近くからドライブをスタート。今回乗車したのは2Lのガソリン車です。

同行者との合流地点である沼津駅北口を目的地としてナビを設定したものの、タッチパネル式ではないナビは慣れてないと使いづらく、恥ずかしながら時間を要してしまいました。BluetoothではなくUSBでナビとスマホを接続すると、Apple CarPlayを使うか否かという画面が出てきました。パケットが嵩むのが嫌だったので今回は使用しませんでしたが、あらかじめスマホのナビアプリで目的地を設定し、それを車のディスプレイと接続して使う方が、人によっては使い勝手が良いと感じるかもしれません。MAZDA3とほぼ同じナビですが、横長のディスプレイは先の地図が表示されにくいという点も、人により好き嫌いが分かれそうです。

藤沢インターから新湘南バイパス圏央道、新東名高速道路東名高速道路を経由して沼津に向かうルートを取りましたが、新湘南バイパスは工事と事故に伴う車線規制で茅ケ崎中央インター付近まで渋滞。高速道路の渋滞で強い味方になるACCですが、当然ながらブレーキホールド機能も連動しているほか、完全停止からしばらくするとエンジンも自動で切れるようになっています。再発進時もステアリングのボタン操作でスムーズに発進できるようになっており、このあたりは2020年代の車として当たり前の装備が備わっていると言えます。

圏央道に入って以降は渋滞も解消し、あとは沼津に向かって全速前進するのみ。ACCも高速巡行に特化して作動し、感覚的にはほぼ自動運転に近いものになりました。とはいえこの車で注意すべきポイントは、下位グレードではレーンキープアシスト機能が付かないことです。車線逸脱警報はついていますが、そこから車線中央に寄せる機能や車線の中央を維持する機能は付いていません。とはいえ、そこまで車がやらなくてもいいと言えばそれまでであり、警報も音や画面ではなく、ステアリングを振動させるものもあるため、安全性に劣るとは言えません。レーンキープアシストも、メーカーによっては制御がかなり雑な場合もあるため、ともすればそこまでなくてもというのが私の持論です。

車高を高めたクロスオーバーSUVでありながら、高速域での安定性に欠けるということはなく、しっかり走ってくれる車だというのが高速道路における印象でした。地上高を高めたことでサスペンションストロークを大きく取れたのかもしれませんが、それゆえかベースのMAZDA3よりも乗り心地がソフトに感じられたというのもポイントです。決して柔らかすぎるわけではないものの、ちょっとした段差を乗り越えたときの衝撃のいなし方が巧いように感じました。

高速道路を降りて沼津市内に出てからもその印象は総じて変わらず、スポーティー路線を狙いすぎたのか足が若干硬すぎるMAZDA3と比べ、CX-30は軟弱ではないにせよ足の動きが良いように感じました。下道ならではのポイントとして挙げられるのが、信号待ちからの発進時の感覚です。アイドリングストップからエンジンが再始動した際のエンジンからの振動はかなり小さく、発進時にブレーキホールドが解除される際の感覚にも違和感は全くありませんでした。機能やスペック以外の点でも「良い車」を感じさせる出来になっていることを感じさせられました。

沼津市南部の郊外路、沼津市街から内浦・西浦にかけての国道414号と県道17号も、実に心地よく駆け抜けられました。国道414号はセンターラインこそあれど狭い道が続き、時折大型車とすれ違うこともありますが、そんな状況でも全く不安を感じさせないサイズ感です。これには個人差もあるとは思いますが、車両感覚がつかみやすいというのも、CX-30のポイントと言えるでしょう。

ワインディングでも好感覚だったのはさすがマツダだと感じたポイントです。操舵性もさることながら、コーナリング時の車の挙動もSUVとしてはかなりいいのではと感じました。CX-30はMAZDA3と同様、リアサスペンションにトーションビーム式サスペンションを採用し、またリアにはスタビライザーを持っていません。そこだけ聞けば挙動についてネガティブな印象を持ってしまうかもしれませんが、実際に走らせてみると先入観はほぼ払しょくされるはずです。これにはCX-30全車に標準で備わる「G-ベクタリング コントロール プラス」の効果もあるかもしれませんが、大本のシャシーの出来が良いのだろうと感じた次第です。

運転を同行者に任せられるシチュエーションもあったため、後部座席での乗り心地も試してみました。マツダらしく走り重視の設計で後部座席での乗り心地には期待していなかったというのが正直なところでしたが、リアサスペンションの制振性能も高く、セダンにも引けを取らない乗り心地を実現しているように感じました。

2日間ほどかけて乗ってみて、まずは「コンパクトなクロスオーバーSUV」というカテゴリがなぜ世界的に流行っているかが何となくでもわかったような気がしました。デザインはSUVらしく地上高を高めるなど(実際どうかは別として)高い走破性を感じさせるようなものであり、乗り味も至って快適。かつ使い勝手もよいとなると、セダンやステーションワゴンを差し置いて人気になるのも頷けます。

CX-30自体、話題性としてはヴェゼルカローラクロスに負けてしまっている感はありますが、車自体の出来はかなり良く、もっと評価されたって良い一台であると言えるでしょう。今回乗車した2Lガソリン車はCX-30の中で最もベーシックなモデルになりますが、動力性能も十分であり、日本の道なら全くもって不自由しないだろうと感じました。長距離ドライブが多い人はディーゼルエンジンを選んだり、新技術に触れてみたいという人は高圧縮比のSKYACTIV Xを選んだりしてみてもよいとは思いますが、こだわりがなければ2Lガソリン車で十分でしょう。

強いて言えばナビの操作性は人により評価が大きく分かれたり、デザイン重視ゆえの後方視界の悪さが駐車時に厄介と思う人もいると思われますが、慣れればむしろ使いやすいと感じるのかもしれません。個人的には良くまとまった車だと感じました。

*1:2023年に日本市場から順次販売開始