杜の都の自然をフル活用!宮城峡蒸溜所を見学してみた(2022/12/3)

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昨年12月のラブライブ!スーパースター!! Liella! 3rd LoveLive! Tour ~WE WILL!!~ 宮城公演で、かれこれ4年ぶりに仙台に行ったのですが、*1、「せっかく遠征するのならライブだけじゃなくて観光もしたい!」と思った次第です。一昨年秋以来現地参戦したライブがどれも首都圏開催だったため、「遠征」というものからは遠ざかっていた次第であります。

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今回現地参戦が叶ったのは日曜日のDay2のみ。しかしながら宿は両日参戦を前提として確保していたため、「土曜日どうしようか」となってしまったわけであります。「ライブ会場に行かないのならば酒が飲める!」ということで、表題にある通り、ニッカウヰスキーの宮城峡蒸溜所の無料見学ツアー(無料試飲付き)に参加しました。

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ニッカウヰスキー仙台工場・宮城峡蒸溜所は、1969年に誕生した同社2カ所目の蒸溜所です。ニッカウヰスキーは1936年から北海道の余市蒸溜所でウイスキーを製造していましたが、創業者の竹鶴政孝はより良いウイスキーを作るために、北海道以外にも蒸溜所を作ることを考えていました。ウイスキーの本場スコットランドには、いくつかの地方ごとに異なった味のウイスキーが作られており、それぞれをブレンドしたウイスキーも存在します。そうしたウイスキーを作りたいと考えた政孝は、スコットランドのハイランド地方に似た余市に対し、ローランド地方に似た気候の宮城県岩手県に蒸溜所を開設するため、候補地を探します。北海道工場長を務めていた竹鶴威*2を中心として建設予定地を探し、最終的に決まったのが、仙台市青葉区*3広瀬川と新川が合流する地点です。

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宮城峡蒸溜所の近くには作並温泉があり、また最寄駅はJR仙山線作並駅になります。作並駅といえば、日本の鉄道における交流電化発祥の地でもありますね。

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仙台市内から遠くないこの地の自然を生かすために、こちらの蒸溜所には様々な工夫が施されています。例えば、宮城峡蒸溜所の敷地内に立つ建屋や貯蔵庫は、ほとんどがレンガ造りになっています。蒸溜所が建設された1960年代であれば、鉄筋コンクリート造りの建物は広く普及していましたが、敢えてレンガ造りが採用されたようです。また、敷地内に木が多いように感じられましたが、これは建設に際して植えられたものではなく、元々あった木を残したものだそうです。「ウイスキーは自然が作るもの」という考えのもと、宮城峡蒸溜所を建設する際にそのような方針が採られたそうです。気候や地形を考えてこの地を選んだのであれば、そこまで拘るというのもわかるところではありますが、建設コストや生産効率に重きを置いてしまうと全く真逆の方向に行ってしまうはず。そこを敢えて元々の環境を活かす方針としたのは、量や効率よりも質を求めた竹鶴政孝の理想があったからと言えるでしょう。

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蒸溜所内のポットスチルにもユニークなポイントがありました。洋酒であるウイスキーにはちょっと似つかわしくない注連縄がありました。これは竹鶴政孝の生家が造り酒屋だったところから来ているものとされています。

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貯蔵庫の中も見学することができました。貯蔵庫内で何年もの時間をかけて熟成されていく中で、樽の中の水とアルコールは年間2%ほどが蒸発していき、原酒の量は年々減っていきます。これを「天使の分けまえ」と呼ぶらしく、天使がウイスキーを美味しくしてくれる代わりに、天使に飲ませてあげるという考えもあるそうです。先述したポットスチルの注連縄も、もしかするとこれと同じ考え、すなわち「ウイスキーは自然や神様が作るもの」といったようなものが根底にあるのかもしれません。

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見学コースの最後にある無料試飲コーナーでは、こちらの3種をいただきました。向かって左から「アップルワイン」「スーパーニッカ」「宮城峡」です。アップルワインはりんごのお酒です。ニッカウヰスキーは創業当初の社名を「大日本果汁」と言い、ウイスキーの原酒が熟成しきるまでの間、りんごなどの果物の加工品を製造・販売していたそうで、そうした時代の名残りともいえるお酒かもしれません。スーパーニッカは1962年に発売されたウイスキー。その前年に亡くなった妻・リタへの感謝の気持ちを込めて作ったウイスキーだとされています。特徴的な形の瓶は涙をモチーフにしたとされ、発売当時は手吹きのガラス瓶が用いられるなど、亡き妻へささげるウイスキーとして相当なこだわりがあったようです。宮城峡はその名の通り宮城峡蒸溜所で作られたウイスキーで、宮城峡蒸溜所のモルトウイスキーだけが使われています。写真の通りグラスにストレートの状態で出てきますが、氷を入れたり、水や炭酸水で割ったりすることもできます。3種とも最初はストレートで飲みつつ、アップルワインは炭酸水で割ってみたり、残りの2種は氷を入れてみたり、色々試してみました。アップルワインはストレートだと甘すぎるので、ソーダ割にするとちょうどよい感じに薄まってくれました。他の2種はストレートやロックでも飲める味でした*4。激安ウイスキーだとストレートやロックだと飲めないものが多いので、ある程度の値段がするお酒ってそれ相応に味がちゃんとしていると感じた次第です。

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無料試飲だけでも十分楽しかったのですが、せっかくなので同じ建物内にある有料試飲コーナーへ。自社の様々なウイスキーがそろっていたのですが、「せっかくならここでしか飲めなさそうなものを…」ということで、こちらの3種を選択。真ん中にある「伊達」は宮城県内限定商品、「ザ・ニッカ12年」と「竹鶴17年」は終売品です。終売品の2種なんて、お店で飲もうとすればめちゃくちゃ高価なはずですが、今回このコーナーで飲んだところ3種で1,000円でした。試飲なので分量は少ないのですが、都内のバーなどで飲もうとすれば、出費はおそらく2~3倍じゃ済まないのではないかと思います。

すっかり試飲だけが目的で行ってきたかのようではありますが、「美味しいお酒を作ろう」という拘りからこの土地が選ばれたということが感じられただけでも大きな収穫だったと思っています。本場スコットランドウイスキーベンチマークとし、大消費地が近く見学客も呼び込みやすい場所ではなく、ハイランド地方とローランド地方に見立てた余市と宮城峡という2か所を選んだというのは、売り込みやすさなどではなく、良いモノを送り出したいという執念をも感じられ、個人的にはそこが推せるポイントです。

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試飲コーナーと同じ建物にあるお土産売り場にてウイスキーを2本購入しました。試飲した宮城県限定のウイスキー「伊達」と一般には終売してしまったという「ピュアモルト レッド」です。どちらも夜にまったり飲むのにいいウイスキーで、買ってよかったと思ってはいますが、試飲コーナーでほろ酔い気分になった勢いでつい買ってしまうというのは、良くできた観光地だなと、どうしても思ってしまうわけです。

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日本のウイスキーと言えば、近年世界的に評価が高まっているとされています。それ以前にはウイスキーの消費が低迷し、原酒の生産量が減っていたこともあり、原酒不足に伴う供給量の減少や一部銘柄の販売休止・終売なども相次いでいます。ニッカウヰスキーも例外ではなく、昔からある銘柄が手に入らなくなるというケースが少なくないようです。そうした状況を踏まえた増産に向けた設備投資も行われているらしく、原酒不足も近い将来解消できそうとのこと。美味しいお酒がより飲みやすくなるように、今から飲んで応援したいと思った次第であります。

*1:2018年12月のAZELEAファンミーティング以来

*2:政孝の養子、甥

*3:当時は宮城郡宮城町

*4:うまいまずいという話ではなく、アルコールの刺激がさほど目立っていないという意味での「飲める」ということ。