劇場版に登場!&幻日のヨハネにも出てくる?日本最古のアーケード型の商店街 沼津市町方町の「アーケード名店街」

沼津駅周辺を中心とした沼津市中心市街地には、昔ながらの商店街がいくつか存在します。地元の方だけではなく、周辺地域からも多くの人が訪れ、往年の「商都」としての賑わいの中心になっていました。

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ラブライブ!サンシャイン!!」の作中にも、それらの商店街のお店が登場します。もっとも有名なのは仲見世商店街で、「マルサン書店」さん(2022年5月閉店)や「やば珈琲店」さんが登場します。ほかにも、お店は出てきませんが、仲見世商店街の南側の新仲見世商店街や銀座通り商店街が、劇場版を含めたアニメにて登場しています。新仲見世商店街は、長年にわたってあったアーケードを近年撤去したことが話題になり、銀座通り商店街は「つじ写真館」さんの黒板アートがファンの間で人気となっています。

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その中で今回紹介するのが沼津市町方町の「アーケード名店街」です。あまねガードからそのまま南下した、旧国一通りより南側にある商店街です。飲食店や食料品店、その他日用品を扱うお店が多数あります。

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アーケード名店街にも、「ラブライブ!サンシャイン!!」に登場したお店があります。駄菓子等を扱う「だいこくや」さんは、劇場版ラブライブ!サンシャイン!!に登場しました。映画にも出てきた今川焼は、お休みの日もありますが、今でも買うことができます。劇場版公開初日から多くのファンが多くのファンが訪れたそうです。

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2022年8月の「沼津地元愛物産展」にて展示された「幻日のヨハネ」のイラストにもアーケード名店街が登場しています。イラストでは「アーケード街」となっていますが、看板のデザインからして推察するに、アーケード名店街がモデルになっているものと考えられます。ヨハネの幼馴染のハナマルが、ここでお菓子に使う果物を買っているそうです。

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アーケード名店街はかなり古い商店街だそうで、今のような形態となったのは1954年(昭和29年)のこと。戦後間もないころに建てられた応急的な木造建築に代わり、防火機能を備えた建物を建設しようという動きから、「沼津市本通防火帯」という名称で誕生しました。街の防火を目的として建てられた高さ11メートル以上で帯状の建築物のことを「防火建築帯」と呼ぶそうで、アーケード名店街はその代表例かつ走りと言える存在だそうです。戦後、日本各地にアーケードタイプの商店街が誕生しますが、沼津市のアーケード名店街は、戦後の日本で最初のアーケード建築であると言われています。地元の方曰く、建設当初は日本各地から視察に来る人がいたそうです。

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アーケード名店街の特徴が、「有階アーケード」という構造です。実際の建物の写真をご覧いただくのが一番わかりやすいのですが、店舗兼住宅の建物の1階部分の一部をくりぬいたような形で歩道の屋根を形成しています。沼津市の中心街にはアーケードタイプの商店街が数カ所ありますが、このような構造の建物が並んでいる商店街は他にはありません。また、店舗兼住宅は共用化されており、その点は当時としてはかなり珍しい造りとなっていたそうです。また、建設にあたっては、「有階アーケード」という構造が連続した街並みが形成されるよう、アーケード名店街の一帯が、「美観地区」に指定されました。その後、2005年(平成17年)に景観法が施行されたことで美観地区が廃止され、「景観地区」に移行しました。

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そんなアーケード名店街ですが、建設からすでに70年近くが経過し、建物の老朽化が進んでいます。加えて、商店街としての活力の低下が問題となっており、建物の更新と商店街の活性化を目的として、再開発の構想が存在しています。

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建物の建て替えも含めてすでに計画が動き出していて、2024年には建物の解体工事と跡地の整地工事に着手し、2027年には新しい建物が完成する予定だそうです。今の建物も、それまでにすべての店舗が営業を終了し、あと1年ほどで姿を消してしまう予定になっています。

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ラブライブ!サンシャイン!!も今年で早いもので8周年を迎えました。それだけの時間が経つと、新しいお店がオープンしたり、今まであったお店が閉店したり、それ相応に街の様子は変化するはずです。テレビアニメが放送されていた当初なんて、マルサン書店が閉店するなんてことはおそらく誰も思っていなかったはずです。また、沼津駅を高架駅にする計画があるという話も、アニメを見ていた人で知っていた人は、地元の方を覗けばほとんどいなかったのかもしれません。虹ヶ咲の舞台のお台場では、作中でも登場したパレットタウンが、再開発計画に伴って閉鎖されるなど、街の様子が急速に変化しようとしているようです。今のところそちらほどのペースではありませんが、始まった当初には誰も思いもしていなかった変化が、沼津でも着実に起ころうとしています。

慣れ親しんだ風景が変化していくことに対して、抵抗を持つ方も少なくないかもしれません。筆者も、幾度となく足を運んだ場所が無くなるようなことには、全く寂しさを感じないということはありません。ただし、お台場にせよ沼津にせよ、それがその街がこの先活性化していく為に必要なのであれば、むしろその変化を目の当たりにできるという意味では、そっちの方が楽しいかなと言うのが正直なところです。マルサン書店の跡地にしても、アーケード名店街にせよ、変化していく様を見られそうというのが、実は楽しみに感じています。

街の様子が変わろうと、昔の風景は色んな形で記録に残っており、そうしたものの価値が見直されるきっかけにもなるのかなとも思います。街を訪れた方が撮影した写真や映像もそうですが、アニメだってそうした記録になりうるはずです。ラブライブ!サンシャイン!!は沼津の街で綿密に取材をして製作されており、街の風景がかなりリアルに登場しているので、アニメの映像がそのまま記録映像になりえるはずです。幻日のヨハネも、あちらは異世界の話となるので、描写はそれらしくデフォルメされていますが、おおむね沼津の街にとても良く似た風景が登場します。2010年代後半~2020年代前半の沼津の風景を記録した作品として、ラブライブ!サンシャイン!!と幻日のヨハネが評価される日も、そう遅くないうちに来るのかもしれません。

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アーケード名店街のお店の中では、先述の通り、劇場版にも登場しただいこくやさんが一番よく知られているようですが、個人的にお勧めしたいのが、こちらの「シーシャカフェゆにーく」さん。昨年11月にオープンしたお店で、地元出身の店主さんが切り盛りされているお店です。様々なフレーバーのシーシャを揃えており、どんな味が良いかを伝えると、それに応じた香りのシーシャを作っていただけます。シーシャにはニコチンフリーのものもあり、またシーシャを吸わずにカフェのみの利用も可能となっています。街歩きや聖地巡礼の休憩スポットとしてもおすすめなので、興味がある方は足を運ばれてみてはと思います。

沼津は言うなれば「街を歩けば聖地に当たる街」ですが、街は着実に変化していきます。ただ、アニメが「昔の街の様子を伝える資料」になるのであれば、それはファンとしてとても誇らしく感じるものです。末永く大事にしていきたいと思います。幻日のヨハネのテレビアニメも7月に始まりますが、沼津のどんな場所が登場するか、いまから楽しみです。