1.「沼津ゲキ推しキャンペーン!」とは?
ラブライブ!サンシャイン!!とJR東海がコラボした「沼津ゲキ推しキャンペーン!」がスタートした日から、先日ちょうど1年が経過しました。
アニメとのコラボにはかなり消極的だったJR東海によるこちらの企画は、発表当初は意外すぎるものとして受け入れられていたように記憶しています。国鉄出身者が多くを占めていた経営陣の世代交代が進んだことによるものという見方もありましたが、コロナ禍を経てビジネス客の利用回復が進んでいないのか、その分の穴埋めをすべく新たな観光需要の喚起を図ろうとしたものというのが、この企画を打ち上げた真相なのかもしれません*1。昨年3月24日に発表されたJR東海の2023年度の重点施策の中では、「需要喚起策により鉄道のご利用及び収益の拡大を図ります」として、旅客の動向やニーズをつかんだ新たな営業施策の一つとして「推し旅アップデート」を挙げ、その代表例として沼津のラブライブ!サンシャイン!!とのコラボを資料内で取り上げるなど、JR東海としてもかなり力を入れた企画であったと伺うことができます*2。
企画自体は昨年8月末をもって終了しましたが、沼津駅を中心としたラブライブサンシャインとのコラボは継続しています。電車で沼津を訪れるファンに対するサプライズ的な演出も今なお行われています。
2.企画を通してあったこと
本企画では様々な催しがあり、期間中は常に訪れる人を飽きさせないような工夫が感じられました。今までコラボ企画が一切なかった事業者のものとは思えないものも多くあり、JR東海の企画力や意気込みを感じさせられ続けました。
イベント初日の3月25日には、渡辺曜役・斉藤朱夏さんと津島善子役・小林愛香さんが1日駅長を務めました。沼津駅長とともに「出発進行!」の掛け声とともに列車を見送る様子などが報じられ、イベントのスタートを飾りました。
イベント開始以降は、キャラクターの誕生日すらそれまで何もなかった沼津駅でも、誕生日を盛大に祝うようになりました。イベント期間で最初に誕生日を迎えた渡辺曜ちゃん(4月17日)以降、駅構内の装飾や掲示板でのお祝いメッセージ掲出など、それまで考えられなかったような演出がなされるようになりました。イベント期間を過ぎてからもこの取り組みは続いており、3月4日の国木田花丸ちゃんの誕生日をもって一巡しました。
6月18日には、この企画の目玉ともいえる「さわやかウォーキング」の開催と、それに合わせた臨時急行列車「ラブライブ!サンシャイン!!」号が運行されました。さわやかウォーキングは沼津駅から沼津港の間を巡るコースで、アニメにも登場した場所がコースに含まれていました。臨時列車は指定席券の販売に関するちょっとしたトラブルもありましたが、そのトラブルに対する対応として追加でもう1本運行されることが決定するなど、思わぬサプライズもありました。
イベントを経た沼津駅では、南北両方の駅舎にキャラクターの装飾がなされました。いずれも期間内に沼津を訪れたファンの新幹線の総利用距離に応じたものです*3。北口駅舎の装飾はすでに終了していますが、南口駅舎の装飾は2024年3月現在継続中です。こちらについても、キャラクターの誕生日に合わせてイメージカラーのライトアップがなされるなど、訪れる人を引き付けるような演出がされています。
3.沼津の街とラブライブ!サンシャイン!!のつながりとは
Aqours CLUB 2024が先日発表されましたが、ラブライブ!サンシャイン!!/Aqoursも、今年で9周年を迎えました。昨年市制施行100周年を迎えた沼津市において、その歴史の1割近い時間において存在していたことにもなり、その影響は決して小さなものではないのかなと感じています。Aqours自体のイベントの頻度が減ったり、ラブライブ!も他グループの活動が活発になったりするなどもあり、近ごろその勢いについてネガティブな意見も散見されるようになっていますが、それでもラブライブ!のつながりで沼津を訪れる人は未だに多いようです。
沼津の魅力はラブライブ!サンシャイン!!に限らないとは、筆者も日々生活していて感じるところであり、そうであると日々言い聞かせているところでもあります。とはいえ、筆者自身はラブライブ!サンシャイン!!がなければ、あるいはそれと出会っていなければ、沼津へ移住するということや沼津を訪れるということは全くなかったかもしれません。それが全てであるとは言えませんが、沼津のことをラブライブ!サンシャイン!!がきっかけとなって知り、沼津という土地自体が好きになったという人は、決して少なくないはずです。ラブライブ!シリーズの後発グループからサンシャイン!!にも触れ、そこから沼津に行ってみるという人も少なからずいることでしょう。8年越しのコラボ企画ではありましたが、決して遅くはなかったのではないかと考えます。
Aqoursさん、いっそ東海道新幹線とのコラボシングルでも出しちゃえばいいのにと思ったこともなくはないです。
— ぷらむ@沼津移住民 (@417plum) 2024年3月18日
コラボ企画の終了からもすでに半年以上が経過していますが、今後も良い縁が続き、それがさらに発展していくことを願うばかりです。JR東海や東海道新幹線とのコラボシングルが出たり、それが新幹線の車内チャイムや駅の接近メロディになるなんてことがあったりしたら、それはそれで素敵だなと思う今日この頃です。211系や311系のラッピング電車が東海道線を走るなんてことがあったら、それはそれで楽しそうな気がします。車内チャイムは昨年20年ぶりに変わったばかりで、それがすぐに変わるなんてことはまずありえなさそうではありますが、そんなことがあったらいいですね。
*1:JR東海が公表している2023年度の月次利用状況を見ると、土休日については新型コロナウイルスの感染拡大前の2018年度並みの利用客数にほぼ戻っているものの、平日は9割程度に落ち着いてしまっている月が目立っています。出典→JR東海ホームページ トップ―企業・IR・採用―投資家情報(IR)―月次ご利用状況―2023年度月次ご利用状況 2024年3月22日閲覧 https://company.jr-central.co.jp/ir/passenger-volume/_pdf/000043060.pdf
*2:JR東海ホームページ トップ―ニュースリリース―リリース一覧―2022年度―2023.03.24《経営》【社長会見】2023年度重点施策と関連設備投資について 2024年3月22日閲覧 https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000042626.pdf
*3:前日または当日の三島駅着のEX利用票を沼津観光案内所にて提示することで特典ステッカーがもらえるという企画があり、その際に利用票から乗車距離を集計していました。