脱「熱血青春スポ根」路線、日常のすがたに特化した「きょうのAqours」という貴重な供給

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2019年1月4日公開の劇場版以来、アニメ作品の供給がなかったラブライブ!サンシャイン!!

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そうした明確な決まりがあるわけではないのですが、テレビアニメ2クールと劇場版アニメが終わると、それを最後にアニメ作品は作られず、その代はフェードアウトしていくという「慣例」が、初代たるμ’sがそうだったがために存在するとされていたらしく、ラブライブ!サンシャイン!! もその流れをたどるものとされてきました。

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その「慣例」を前提とすれば、「幻日のヨハネ」のアニメ化が発表されたことは、ある意味でラブライブ!の歴史を変える大事件であったと言えます。今明らかになっている情報から勘案するに、「幻日のヨハネ」には「スクールアイドル」というものは登場しない模様です。それだけで新鮮な存在と感じられるものですが、やはり劇場版公開からかなりの時間を経てこの発表があったということは、かなり衝撃的な事件であったと言えます。

但し、ラブライブ!サンシャイン!!に関して言えば、劇場版公開以降、新しいストーリーの供給がまったくなかったというわけではないのも事実。「きょうのAqours」というイラストとキャラクターボイスを組み合わせた短編動画が、ラブライブ!シリーズの公式YouTubeチャンネルにアップロードされています。

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2021年10月29日公開の「第一回 高海千歌」から、2022年7月6日現在、全5作が公開済みです。各メンバーの日常を描いた作品で、ライブシーンや学校での様子はありません。

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日常を描いた作品なので、沼津の街のあるごく普通のお店が登場してくるのも「きょうのAqours」の特徴。渡辺曜仲見世のお店に昼食の買い出しに行ったり、黒澤ダイヤが買い物帰りに「桃屋」のメンチカツサンドを買っていったり、「Aqoursは沼津に生きている」ということを良く感じさせる作りになっているところが、この作品の一番のポイントであると言えるでしょう。「仲見世」というのがどのお店を指すのかはわかりませんが、仲見世商店街の近くにあるスーパーが、2022年6月末をもって閉店しましたね。

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第3回の「津島善子」回や第5回の「国木田花丸」回も面白い話になっています。ゲームの腕前でルビィに勝ちたい一方で、遊びに来てくれると聞いてお菓子や飲み物をノリノリで用意し始める善子は「根は良い子」というのを地で行く描かれ方であり、初めてのスマホに苦戦した末善子に助けを求めてなんとか初期設定を終える花丸は予想通りの王道を行くもの。この2人の回も「スクールアイドル」ではないごく普通の高校生の日常が描かれています。

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また、ライブの幕間映像としても、「きょうのAqours」は登場しています。2021年の年末のライブでは、全6編の映像が「DREAMY COLOR」とリンクする形で作られており、それまでのライブとは全く異なり、幕間も込みで1つのライブが形作られているような演出となっていました。むしろ幕間アニメと「DREAMY COLOR」が本編だったと言っても過言ではないライブだったと感じています。「10年後の自分たちへ」というテーマの幕間アニメでしたが、そこからつながるのが「DREAMY COLOR」だったというのが、「幕間あってのライブ」という全く新しい形を、2年半ぶりのライブで見せてきたというところです。

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2022年6月の6thライブ”WINDY STAGE”も、幕間映像からアンコールの「君のこころは輝いてるかい?」が始まるという仕立てになっていました。こちらはより日常色の強い作品だったように感じています。「大きな魚を釣ってくる」と千歌に約束しつつあまり釣れずに終わってしまう曜や、ダイヤと古着屋に行って楽しそうに服を選ぶ善子など、オタクのツボを突いてくるストーリーが今なお記憶に残っています。

幕間アニメと言えば、コメディ的な雰囲気の強いアニメが従来は一般的でしたが、最近では「魅せる幕間」を意識しているかのように感じられます。「丁度いいトイレ休憩」だったというのも事実ではありますが、幕間までたっぷり楽しませてくれるライブというのは、やはりそれだけ密度の濃いものであると言えるはずです。それもアニメの振り返りではなく、オリジナルのストーリーであるというのがすごいと思うところで、ライブの魅力が単に曲に合わせたパフォーマンスだけではないと思う次第です。

YouTubeチャンネルにおける「きょうのAqours」は、少なくともあと4作は作られるはずです。残りのメンバーをさらに深掘りするストーリーにも期待できるところで、単なるネット公開の短編アニメだと決して侮れないのがすごいです。アニメに関しては空白の時間が長いように感じられたラブライブ!サンシャイン!!ですが、その間にも質のいい供給は存在していました。料理の仕方次第でここまでの作品ができるキャラクターの設定というのも、Aqoursの魅力であると思うところで、それを基に作られる「幻日のヨハネ」のアニメに期待してしまうというのは、ある意味で当然のことなのかもしれません。