1.ちょっと歩けばタップルームがある?沼津の新名物「クラフトビール」
クラフトビールと一言でくくっても、三者三様という表現では言い表せないほど、様々なバリエーションのビールが存在します。沼津のクラフトビールも例にもれず、沼津市内にタップを構えるメーカーにはそれぞれ特徴があります。
沼津市内には、沼津のクラフトビールが全社とも揃っているとするお店もあり、そちらで味見程度にいただくということも可能ではありますが、せっかく沼津まで来て飲むのであれば、それぞれの直営店にいくのがおすすめです。直営店なのでお店の方もビールに詳しく、お店によってはブルワー*1の方が時折顔を出すところもあるため、ビールづくりに関する話を聞けることもあります。また、料理にも力を入れているお店も多いため、料理とビールのペアリングも楽しむことができます。
いずれのお店も沼津港~沼津駅のエリアにあるため、飲み歩きも可能です。沼津港を起点として沼津駅まで向かうという想定で、お店を5つほど紹介させていただきます。
2.お店のご紹介
①ベアードビール・沼津フィッシュマーケットタップルーム
沼津港の目の前にある「ベアードビール」のお店です。ベアードビールさんは日本のクラフトビールの中でも大手の部類に入るメーカーであり、どちらかといえばまだ「地ビール」という呼び方が一般的だったはずの2000(平成12)年に創業しました。その創業の地が沼津市千本港町で、創業当初はこちらでビールを醸造していました。
10年ほど前に大きな工場を伊豆市大平に開設し、現在ではもっぱらそちらでクラフトビールの醸造を行っていますが、創業の地でもある沼津港には今なおタップルームが健在です。普通のテーブル席やカウンター席のほか、沼津港を眺めながらビールをいただける席もあります。
大手ということもあり、定番のビールだけでも充実しているのが特徴です。個性的な風味はしっかり感じられつつも、妙な癖は一切ないバランスの取れたビールがそろっており、「普通のビールは一通り飲んできたので、ちょっと変わり種のものを開拓してみたい!」という方にも、どちらかといえばとっつきやすいお店なのかもしれません。
②沼津クラフト・テイスティングルーム
ベアードビールのお店から15分ほど歩いて北上したところ、千本浜公園近くの住宅街にあるのが「沼津クラフト」の醸造所兼テイスティングルームです。醸造所とはいっても、遠目で見るとビール工場らしからぬ外見でもあり、Googleマップなどで場所などを確認しながらでも迷ってしまうところです。
醸造所併設のクラフトビールタップとはいっても、レストランとして営業しているお店が多いのですが、こちらはその名の通り「テイスティングルーム」で、2023年10月時点では料理の提供は行っていません。その代わりに持ち込みでの飲食も可能となっており、沼津港周辺でテイクアウトの食べ物を買って向かうのもいいかもしれません。
こちらのビールも飲みやすいものが多く、クラフトビールをあまり飲んだことがないという方にもおすすめできるビールが多く揃っています。特に推したいのが「クリームラガー」で、まさに沼津を思いっきり飲み干せるような、やわらかい味が特徴です。
ちなみに、こちらの沼津クラフトさんは、2024年1月に新しいお店をオープンさせました。「SENSPI(センスピ)」というお店で、スピリッツを主力に据えたお店です。自家製クラフトサワーが主力のお店ですが、沼津クラフトのクラフトビールや世界各地の様々なスピリッツを楽しめます!
③マスターズブルーイング・2階のビアパブ
2022年にオープンした沼津市内で一番新しいブルワリーの「Masters Brewing(マスターズ・ブルーイング)」さんのお店です。同じビルの1階が小さなビール工場となっており、その上の階にあるビアパブでビールを飲めるというお店です。場所は沼津駅南口の交差点のすぐ近く。1階の「沼津駅前醸造所」は、2023年10月時点で沼津駅から一番近い醸造所となっています。
こちらを開設したのは、同じく沼津駅前にお店を構える居酒屋「さえ丸おじさんのお店」のオーナーの方。クラフトビールの街となりつつあった沼津において、もっといろんなバリエーションのビールがあってもいいんじゃないかと考え、醸造所を開設するに至ったそうです。
先の2つとは打って変わって、「インディア・ペールエール(IPA)」や「エキストラ・スペシャル・ビター(ESB)」などの、クラフトビールらしい香りや苦みをしっかり感じられるビールがそろっているのが特徴です。醸造が始まってまだ間もないブルワリーですが、自社醸造のビールも着実に増えてきています。最近では飲み比べセットも取り扱いが始まり、同じ種類でもそれぞれの特徴を比べるという楽しみ方もできるようになってきています。
④ONEDROP
仲見世商店街の駅側入り口近くの、パチンコ店跡のビルの地下にあるのが「ONE DROP(ワンドロップ)」さんです。沼津市に本社を置く人材派遣会社が2022年に始めたクラフトビールのブルワリーで、沼津市内では4か所目の醸造所です。
こちらで製造・販売されているビールは、2023年10月現在で7種類。醸造所の開設当初からある4種類に加え、後から3種類が追加になりました。現時点では季節限定のものなどはリリースされていないようであり、いずれも様々なスタイルのビールの基本形をなぞるようなものになっています。
筆者自身も一度行ったきりになってしまっているお店ですが、ビールが数種類追加になったということで、改めて足を運んでみようかなと考えているお店でもあります。クラフトビールはぼちぼち飲みながらも、なんとなくのイメージを頭に浮かべたまま飲んでいるという感じでもあるので、基本形を揃えているONE DROPさんで、今一度勉強しなおそうかなと思っている今日この頃。仲見世商店街で屋台を出している日もあるので、そんな日にお邪魔できたらと思っている次第です。
⑤駅前ビール工場・リパブリュー沼津
沼津駅南口を出て、富士急ビルがあったあたりを進んだ先にある雑居ビル「ポルト沼津」の地下にあるのが、「駅前ビール工場・リパブリュー沼津」さん。2017年に醸造を開始したリパブリューさんの第1号店で、創業の地でもある場所です。
その名の通り、店舗の奥にはクラフトビールの工場があり、ビールを飲みながら醸造の作業の様子が眺められることもあるのがこちらの特徴です。三島市内に新工場を建設し、そちらで作られるビールも増えてきましたが、今なおこちらのビール工場で作られるビールもあるそうです。
こちらのタップ数は静岡県下でも最大級となる20タップ。他のブルワリーで作られたゲストビールが提供されることもありますが、そのほとんどが自社製造のビールなどで埋まっています。2017年の創業以来、「ないものを造る」というコンセプトの下で、地元の食材を副原料として使ったビールや日本ではあまりなじみのないスタイルのビールなど、様々なビールを世に送り出してきています。こんなビールがあったんだという発見が尽きないブルワリーなので、初心者からマニアまで、幅広く楽しめるお店といえるはずです。
3.海鮮グルメでもアニメでもない、沼津の新たな楽しみ方
ここまでかなりざっくりと紹介してきました。ここで紹介したのは「沼津市内に醸造所が所在する/していたお店」となります。おいしいクラフトビールが飲めるお店は他にもあり、そもそも筆者自身がまだいけていないお店というのもあるというのが正直なところです。それだけクラフトビールとは奥が深い世界なのかもしれず、沼津における”沼”と化しているというのが現状でしょう。
沼津市に留まらず、周辺の静岡県東部の各地には様々なブルワリーがあり、ある種の「地域における新しい産業」と化しつつあるのではないかとも見て取れます。ここで紹介したブルワリーのビールも、最近では東京都内など他地域でも見かけることが増えつつあり、みかんやお茶、ひものに次ぐ「沼津の名産品」として認知される日も決して遠くないのではないかと考えます。それ故に、現地に出向いて味わい、体験する価値が十分あると言えるはず。アニメの舞台巡りや海鮮グルメなどとは違う、新たな切り口での沼津観光として、「クラフトビールの飲み歩き」というものを強くお勧めしたい次第です。
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▼2024年1月新オープン!「沼津クラフト」発のスピリッツに特化した新店舗「SENSPI(センスピ)」
▼20種類が飲み放題!記念ビールもリリースされる「リパブリュー沼津店」の周年イベント