【沼津食い倒れログ】安田屋(本町・そば屋) 市長もお気に入り?!地元の人に愛される隠れたデカ盛りのお店

沼津でそば屋といっても、わざわざそこを取り上げるという人はそれほど多くないはずでしょう。沼津でおいしいものといえば、多くの人が海鮮料理を挙げるものだと認識しています。今年は海水温が極端に高かったために不漁となってしまっているようですが、沼津ではアジの養殖が盛んであり、アジの干物や刺身などを多くのお店で食べることができますし、沼津港は深海魚の水揚げ量が多いことでも知られるため、それらを使った料理が食べられるお店もあります。そのほか、「港町」らしい雰囲気の海鮮丼などを提供するお店も多くあり、「沼津=海鮮」という図式が広く定着しているというのも、十分頷ける話です。

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ただここであえて取り上げたいのが、沼津市本町にあるそば屋「安田屋」さんです。店名だけ聞くと、三津の有名な旅館を連想する方が多いかと思いますが、こちらは沼津駅南口から15分ほど歩いたところにあります。

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沼津の街の中心地は、今でこそ沼津駅の周辺であり、それも一部では「国道一号のバイパスに向かって年々北上している」などと言う人もいるようですが、古くは旧東海道を中心とした、それこそ今の本町の付近が、沼津で一番栄えている場所だったそうです。沼津市が誕生する前にあった沼津町すらできる前の、東海道沼津宿だった時代には、この辺りには多くの旅籠が軒を連ねていたとか。明治時代の後期になり、東海道線が開業すると、旅籠の多くは廃業や業種転換を余儀なくされましたが、それでも沼津の中でも賑やかな場所として栄えていたらしく、1世紀以上経った今なお多くの商店が集積する商店街が形成されています。

レトロな雰囲気の店内には、テーブル席と座敷席の2パターンがあります。一人で訪れるとほぼ確実にテーブル席に通されますが、空き状況や片付けの状況次第では座敷の方に通されることもあります。お昼時などにもなると多くの方でにぎわうようで、タイミング次第では麺切れでしばらく待つということもあります。店内で厨房以外のホール部分を切り盛りするのは女将さんと思しき女性の方。どんなに忙しくてもきめ細やかに、お冷をもってきてくれたり、タイミングを見計らって注文を聞きに来てくださったりと、丁寧に接客してくださるという印象です。

そばという食べ物自体だいぶ軽いので、分量を増やした「大盛り」などを頼まれる方も少なくないはずです。筆者自身も蕎麦は並盛をいただくということはめったになく、ある程度分量を増やすことが常です。安田屋さんも例外ではなく、こちらのような「中盛り」をオーダーしています。

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上から順に「中天ざる」と「中ざる」です。ちなみに「中もり」だと、上に刻み海苔が乗らないものになります。

これを見て不思議に感じる方もいるかもしれませんが、先の2枚はあくまで「中盛り」です。筆者とて、ほかのお店じゃこれほどまで盛り方が元気な「中盛り」には、そば以外の料理でもなかなか出くわさないのですが、まだまだ上がいるというのがこちらの安田屋さん。「中」があれば「大」だって当然存在します。

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そんな「安田屋さんの大盛り」がこちら。写真は「大もり」です。こうやって見ると、並盛りと大盛りの中間のコマンドとして、中盛りが設定されていることの重要性がよくわかってきます。今にもざるからこぼれてしまいそうな盛り方であり、いざ目の当たりにすると「どのあたりからどう食べようか…」と迷うほど。

ただ、いざ食べ始めてみると、意外とするすると入って行ってしまうのが、そばという食べ物の恐ろしいところ。あくまで筆者の経験と感覚ではありますが、食べ進めてみると意外といけるなと感じてしまう上、いかんせんそばもおいしいので、初めは分量に圧倒されるものの、おいしく完食できてしまいます。

ボリュームも大満足ですが、コストパフォーマンスも沼津市内では最強クラスなのが安田屋さんの特徴。もりそばやざるそば、天ざるそばは並盛りでそれぞれ650円、750円、1000円で、中盛りは150円増しと大盛りは250円増しとなります。つまり、先ほど紹介した「大もり」は、あのボリューム感でたったの900円*1。そばで900円というのはだいぶ安いのと、それが特盛りレベルのボリュームというのも驚異的なもの。このご時世、例えば「ちょっとおしゃれでスープもだいぶ凝ってるけど食べた気がまるでしないラーメン」が軽く1,000円以上してしまうということが珍しくなくなってきていますが、そんな時代にこれで大丈夫なのと思ってしまうくらい、めちゃくちゃ良心的な価格設定です。

そばのほかにも、うどんやきしめんなどがあるほか、ラーメンなどの中華麺やカレーライスやカツ丼などのご飯ものもあります。筆者自身はまだオーダーしてみたことがないのですが、中華麺やご飯ものも美味しそうであり、これらとてコストパフォーマンスはかなり高め。結局そばを頼んでしまうというオチもよく見えるのですが、今度行ってみたら頼んでみようかなと考えています。

古くは東京から京都に向かう際、東海道で三島宿の次にあったのが沼津宿でした。箱根を越えてきた旅人が、三島より先に進んで「沼津まで”ぬまづ(飲まず)食わずで行こう」として辿り着いたのが沼津宿だったのかもしれません。もっともこの言葉自体は東海道線が開業してから生まれたとされているとされていますが、江戸時代の旅人たちだって同じようなことを考えていたのかもしれません。そうした長旅で疲れた旅人たちをもてなしていた近世の宿場町の名残の一つが、安田屋さんの大盛りのそばなのかもしれません。

地元の方にも愛されるお店で、沼津市の頼重市長も度々訪れているそうです。市長のInstagramへの投稿を見ると、周辺で催されるイベント視察の合間に、大盛りのそばを食べられているようです。写真で見てもすごいボリュームで、実物を見ても圧倒されて、「次は中盛りで十分かなあ…」などと思っていても、再訪するとついつい大盛りを頼んでしまうのは、なんとも不思議なものです。アニメの舞台巡りなどの合間に腹ごしらえをどこかで…、という方にも、リーズナブルな価格でお腹いっぱいになれるという点でぜひともおすすめしたいお店です。

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*1:2023年10月時点