【沼津駅高架化】「沼津の玄関口」もようやく… 高架化後の沼津駅新駅舎の基本計画が2024年度から始動

1.概要

貨物駅や車両基地の予定地での工事が始まる中、駅本体も高架化に向けて事業が本格始動します。2月16日付の静岡新聞によると*1沼津市は、鉄道高架化後の沼津駅の新駅舎の基本計画の策定に2024年度から着手すると、沼津市議会沼津駅鉄道高架とまちづくり特別委員会などで報告しました。

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沼津駅近鉄道高架化事業における沼津駅の整備は、JR東海沼津市の協業によって進められます。沼津市が担当するのは主に「駅舎のデザイン」「歩行者の動線です。駅周辺の人の流れや利用実態、市民のニーズなどを踏まえたうえで、駅舎のデザインや公共通路などの方向性を決めるようです。約2年かけて進めたのち、JR東海が2026年度から着手する、駅舎内の施設配置などを含めた新駅舎の詳細設計につなげます。

2.今の沼津駅

①南北の通り抜けができない

現在の沼津駅における一番の「不便なポイント」といえば、いわゆる「南北自由通路」というようなものが存在しないため、「駅の南北の通り抜けができない」という点でしょうか。今ここであえて挙げることでもないかもしれませんが、沼津駅が抱える構造的な欠点で一番大きなものといえば、通り抜け不可ということが挙げられるかと考えます。

今の沼津駅で、「駅の南北の通り抜けができない」というのも、厳密にいえば違うという見方もできなくはありません。南北いずれの駅舎で150円の入場券を買えば、駅の営業時間内かつ両方の改札が営業している時間であれば、沼津駅のこ線橋を通って、駅の南北を行き来することができます。駅の西側にある「あまねガード」を通らない近道として使えるほか、エレベーターもあるので車椅子やベビーカーなどを使う方にも使いやすいルートであると言えるかもしれません。

しかしながら、駅構内である以上、先述の通り150円の入場券が必要になってしまいます。街の中心部を線路をまたいで移動する際、その都度150円も払うというのは、大した額に見えないようでも、毎日払っても良いと思う人はめったにいないはずです。南北両方の駅舎から一番近いアンダーパスであるあまねガードも、歩道の幅が広いとは決して言えないうえ、そのアプローチ部は階段や坂道になっており、ベビーカーや車いすを使う方々にとっては「移動の障壁」と言える環境です。

②駅構内が狭く、古い構造のまま

沼津駅でもう一つ欠点を挙げるとすれば、「駅構内が狭く、古い構造のまま」というものがあるでしょう。1980年代末期には高架化の構想が浮上しながら、2020年代に突入するまで本格的な工事が始まらなかったため、大きな改修工事がなされないまま今日に至ると考えられるところですが、それでも使いづらいと感じることが少なくないというのが、日常的に利用する身としての正直な感想です。

沼津駅は3面6線、3つのホームと6本の線路の構造です。また、駅の北側にも線路があり、夜間に車両を留置するスペースとして使われています。これらを跨いで駅の南北にある駅舎を結んでいる跨線橋のほか、南口側から各ホームにつながる地下通路があります。これらがお世辞にも広いとはいえず、列車の発着のタイミングが重なると、列車から降りた人や乗り換える人で、通路が大変込み合います。沼津駅東海道線御殿場線の乗換駅であるほか、途中駅である東海道線にも沼津止まりの列車が運行されているため、違うホームから発車する乗り換え列車に乗り継いでいく人も少なくありません。そうしたタイミングになると、通路や階段が大変混みあうという状況になります。

また、跨線橋にはエレベーターがあり、バリアフリーの最低限の設備は一応整っていると言える状況ではありますが、2024年2月現在、エスカレーターは1か所もありません。観光や仕事で出入りする人が多いと考えられる沼津駅で、スーツケースなどの大きな荷物を持った人も少なくないとは思いますが、今の沼津駅はそういった人にとって使いやすい駅であるとは言い難いはずです。

3.未来の沼津駅

①南北自由通路が設けられる予定

前述の「駅の南北の通り抜けができない」という点については、高架化後の新駅舎には南北自由通路が設けられる計画になっており、構造上の一番大きな欠点については、解消される見込みになっています。

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6年前に沼津市が制作した高架化後の沼津駅周辺のイメージ動画では、冒頭部分で改札を出て右に曲がり、南口方面を目指すシーンが描かれています。改札を出たところが南北自由通路とみられ、駅の南北をダイレクトに結ぶ通路として機能していることが伺えます。また、2020年3月に制定された「沼津市中心市街地まちづくり戦略」でも、駅周辺を回遊する歩行者動線の一角として、駅コンコースを含めているなど、高架下に南北自由通路を設ける方針であることがわかります*2

沼津駅単体というよりも、沼津の街が長年抱え続けた構造上の課題が、高架化で駅が新しくなることにより、ようやく解決することが叶うようです。道路の拡幅・平面化で、渋滞や大雨による冠水に悩まされたガードが解消し、自動車交通が円滑になるだけでなく、駅の南北を高低差や迂回なしに行き来できるルートが生まれることにより、歩行者の移動も容易になることも見込まれます。体の不自由な方やベビーカーを押している方等はさることながら、それ以外の人にとっても、沼津の街が移動という面で使いやすい形にアップデートされるのではないかと考えます。

②駅構内の狭さなども、高架化で解消される…?

2つ目に挙げた「駅構内が狭く、古い構造のまま」という点がどうなるのかというについては、確実なことは明らかになっていません。ここで何をどう描いたところで、期待や想像の域を脱しないことは確かです。唯一確実に言えることとしては、駅構内の跨線橋と地下通路が無くなるということくらいでしょう。

現在は改修中として撤去されてしまっているのですが、プラサヴェルデの2階には、昨年まで高架化された沼津駅の完成予想模型が展示されていました。そちらの模型からは、先述した南北自由通路だけではなく、改札内に乗り換え通路が設けられる計画であるということも見て取れました。また、階段やエレベーターだけではなく、エスカレーターを設置することも考えているようでした。「駅構内が狭く、古い構造のまま」という点についても、何らかの形で改善が図られる見込みであると言えるでしょう。

③ホームの配置が変わり、改札口も1か所になる?

先ほど紹介した模型(撤去済)から見て取れる沼津駅の変化は、他にも2つほどあります。「ホームの配置が変わる」ことと、「改札口が1か所になる」ことです。

現在の沼津駅は、海側(南口側)から1番線、2番線と、一番山側(北口側)が6番線になっています。6つあるうち、1番線から4番線は主に東海道線の列車が、5番線と6番線は主に御殿場線の列車が使っています*3。こちらが高架化後は、東海道線のホームが御殿場線のホームを挟み込む形になります。駅の東側で御殿場線東海道線の上り線を越える構造をとると、高架の面積を最小限にできるため、事業費も最も安価にできるということから、先に述べたような配置とする案が採用されました。また、沼津駅での乗り換えの利便性が向上したり、線路の構造が見直されることで東海道線御殿場線の直通列車を増発できる等のメリットがあるとされています*4

また、現在3か所ある改札口(南口、北口、アントレ2階直結改札)も、高架化後は1か所に集約されるようです。確かに、南北自由通路に面した箇所に1つあれば十分であると考えられるほか、窓口も券売機も1か所に集約した方が、駅を運営するコストもある程度削減できるように思えます。

4.まだまだのように思えて、始まったら意外と早そう

沼津駅近鉄道高架事業の事業期間は2041(令和23)年度までとされており、完成まではあと20年近くもあります。事業認可は2006(平成18)年と20年近く前のことであり、事業の中断を余儀なくされるような事態さえなければ、事業はすでにかなり進んでいたのかもしれません。

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しかしながら、新貨物駅の着工した昨年以降、高架化に関係する話が一気に動き出しているようにも感じられます。駅舎のデザインなどの話についても、このタイミングで出てくるものとは思っていなかったというのが正直な感想です。貨物駅や車両基地の工事が進めば、駅本体にも手を付けられるところが出てくるはずで、1日も早い完成を目指すとするのであれば、このくらいのスピードで動くのもおかしくはないのかもしれませんが、話がかなり速いようにも感じています。

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街の姿が大きく変わる事業の行く末を追える限り追いかけつつ、願わくばその完成を現地で見届け、その上で今の沼津のすがたもしっかりと目に焼き付けておきたいと感じた話でした。まだ見ぬ新しい沼津駅が、使う人すべてに愛され、街に馴染む駅になることを願うばかりです。

*1:あなたの静岡新聞「高架化後の沼津駅舎 基本計画策定着手 24年度から」  https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1413838.html 2024年2月21日閲覧

*2:沼津市公式ホームページ ホーム―市政情報―各種計画―沼津市中心市街地まちづくり戦略―第4章 中心市街地まちづくりの4つの戦略 p.51 https://city.numazu.shizuoka.jp/shisei/keikaku/various/machisenryaku/pdf/4.pdf 2024年2月21日閲覧

*3:5・6番線以外発着の御殿場線の列車や5・6番線初の東海道線の列車も2024年2月現在存在します。

*4:静岡県公式ホームページ ホーム―まちづくり・県土づくり―各地区土木事務所―沼津土木事務所―沼津駅近鉄道高架事業―沼津駅近鉄道高架事業についての質問 Q.8.御殿場線東海道線上越しする計画としたのは? 

https://www.pref.shizuoka.jp/machizukuri/dobokujimusho/numazudoboku/1002167/1042591.html#group8 2024年2月21日閲覧