2022年5月末をもって惜しまれつつも閉店した、仲見世商店街にあった「マルサン書店仲見世店」。「ラブライブ！サンシャイン!!」のアニメにも登場し、ラブライブ！関連の書籍も多く取り揃えており、舞台の街にあって「聖地」の一角を占めていました。
建物の老朽化と周辺再開発に伴い閉店した同店ですが、跡地の今後については各所で話題になっていました。沼津駅付近高架化事業を中心とした駅周辺地域の再開発が今後本格化する見込みらしく、マルサン書店があった仲見世商店街もまた、その対象となってもおかしくなかった場所です。
そんなところで先日静岡新聞などで報じられたのが、マルサン書店仲見世店跡地を中心とした区画に、「地上20階建て規模の再開発ビル」が建設される予定だとするニュースです。
静岡新聞によると、旭化成不動産レジデンスと三菱地所レジデンスの2社が事業協力者となり、地権者で構成する再開発準備組合が方針を決定。今後、関係機関とともに都市計画決定に向けた協議を始める方向だそうです。
再開発の対象となるのはマルサン書店仲見世店跡地の他、靴店や飲食店などがある区画で、面積は0.4ヘクタールほど。沼津駅と沼津港を結ぶさんさん通りと仲見世商店街に挟まれた、三交イン沼津駅前やニッポンレンタカー沼津南口駅前営業所の南側のエリアになります。
新たに建つ予定の20階建てビルには、店舗や駐車場、住居などが設けられるほか、大手のテナントを誘致することも検討されているようです。ビルの形態としては、しずてつストアや魚がし鮨、マクドナルドなどが入居する「イーラde」に近いものになるようです。低層階に店舗が入り、高層階がマンションになるものとみられます。再開発ビルらしく、対象エリアにあったお店が引き続き入居することも考えられますが、大型のテナントが何になるのかも気になります。沼津市を始めとした静岡県東部に今までなかったようなお店を誘致することも考えているのかもしれません。
住居については「イーラde」よりも多い戸数を設ける計画だといいます。新幹線停車駅の三島駅まで一駅という利便性の高さなどの理由で、沼津駅周辺の居住人口は堅調に推移しているそうです。「イーラde」のマンションも引き合いが強まっているらしく、沼津駅周辺における住宅需要が高いということが伺えます。
仲見世商店街自体、以前は多くの買い物客でにぎわっていたようで、通り抜けるのが難しいくらいの人出だったそうです。それがいまやシャッターが目立つようになったり、閉店したままの店舗跡もいくつか見受けられる様子です。商店街や沼津市としては一刻も早く再開発に着手したかったものと思われますが、沼津駅付近の高架化事業が10年以上も停滞していたため、外部から参入してくる開発業者が現れなかったのかもしれません。それがここに来て高架化事業が動き出し、また沼津駅周辺の住宅地としての需要を見込んでか、前出のような大手のデベロッパーが参入し、再開発に向けて動き出したものと思われます。
低層階に店舗などが入り、高層階はマンションという造りの再開発ビルは、首都圏を中心に各地に建設されています。私の実家のある東京都調布市周辺でも、10年前に地下化された調布駅周辺や高架化後も長年にわたって区画整理が続いていた府中駅周辺など、そのような造りのビルが何棟か見受けられます。マルサン書店の跡地に立つとされるビルも、どんな様子になるのかは想像するに容易いです。こちらの再開発事業がうまくいけば、仲見世商店街の周辺区画でも同様の計画が動き出すのかもしれません。
筆者自身、それで沼津の街に活気がもたらされるのであれば、それが一番であるとは考えています。ただ、どこにでもあるようなマンションと雑居ビルのハイブリッドのようなビルだけが増えてしまうというのも、沼津という街の魅力という点で、果たして正解なのかなというのが正直なところ。マンションだけではなく、商業施設や宿泊施設なども増えてほしいなと思います。
例えば、沼津市を含めた静岡県東部エリアですが、「～カメラ」のような大きな家電量販店の店舗が見受けられません。そうしたお店が駅の近くにできれば、観光客ではなく、周辺地域に住む人が沼津駅周辺に買い物に来るようになるはずで、「県東部の商都」と呼ばれた時代のような活気が戻ってくるのかもしれません。あるいは、ビジネスホテルではなく複数人でレジャー目的で宿泊すること前提のホテルを作るというのも、沼津の街を夜まで楽しめるという点で、有益なのかなと思います。
もっとも、将来の沼津の街の姿を決めるのは、他の誰でもない沼津の方々でしょう。沼津の皆さんが選んだ道でまた元気な街になるというのが、一番いい結果だということで間違いないはず。多くの人を本の世界に誘ってきた場所が、「未来ずらぁ～！」と驚かされる魅力的な場所になればいいなと願うばかりです。
