【考えてみた】こちらも深刻?どうして伊豆箱根鉄道駿豆線では、未だに交通系ICカードが使えないの?(2023年11月現在)

沼津でイベントが開催される度、Twitter(現:X)などのSNSにて必ずと言ってもいいほど話題になるのが「沼津Suica問題」。東海道線熱海駅を境に、JR東日本の「Suica」エリアとJR東海の「TOICA」エリアが分かれており、熱海駅をまたいでこれらをはじめとした交通系ICカードを利用することができないというものです。イベントやキャラクターの誕生日など、多くの人が沼津を訪れるタイミングにおいて、交通系ICカードを利用して東京方面から在来線で来た人が、改札窓口などで駅係員による処理待ちの長蛇の列を作るということがあります。当然ながら、この状況は近隣の三島駅富士駅などでも起こりえるもので、現に筆者も自動改札機を通過できずにカードのデータ処理のために窓口へ向かう人を多く見てきましたが、沼津がラブライブ!サンシャイン!!の舞台となったこともあってか、インターネットにおいては沼津が特にピックアップされているという節もあるようです。

f:id:plum_0417:20231110001656j:image

沼津がラブライブ!サンシャイン!!の舞台となって早8年、「いい加減Suicaは使えないと学習しないのか?」という声も多く聞かれますが、「スマートEXなどの新幹線のチケットレスサービスを使うことにより、紙の切符を買うことなく沼津まで行ける」という解決策も存在します。当然ながら料金は在来線よりも高くなりますが、東京からの所要時間は在来線の半分以下になり、最新型のN700Sなら全座席にコンセントがついているなど、料金相応の利点があることも事実です。移動時間を短縮できる分、沼津への滞在時間を延ばせたり、在来線よりも快適な新幹線を利用することにより、移動による疲労も軽減できるというのもメリットとして挙げられるはず。根本的な解決策ではないという意見もあるかもしれませんが、ネットで予約して登録しておいた交通系ICカードを用いて乗車することにより、「券売機や窓口に並んで切符を買う手間を省く」という目的を達成する手段とは言えるでしょう。
f:id:plum_0417:20231110001528j:image

「沼津Suica問題」については有効な対処法が存在するものの、それでもどうにもできないのが、表題にもある伊豆箱根鉄道駿豆線における交通系ICカードの話。2023年11月現在、伊豆箱根鉄道駿豆線では、SuicaTOICAPASMOなどといった交通系ICカードを利用して電車に乗ることができません。JR東海道線御殿場線、周辺を走るバス会社*1や主なタクシー会社はほとんどが交通系ICカードに対応していますが、駿豆線だけが未だに対応していません。

交通系ICカードの先駆けとして、JR東日本Suicaを導入したのが2001年のこと。当初は首都圏エリアのJR在来線でしか使えないカードでしたが、JR西日本ICOCAJR東海TOICA、関東私鉄によるPASMO*2などが登場し、それらの相互利用が進むと、北海道から九州まで使える便利なカードとして普及していきました。初登場から20年以上経ち、大手の鉄道事業者のみならず、地方の中小私鉄においても、交通系ICカードを用いて電車に乗ることができる事業者が近年増えつつあります。

plumroom-0417.hatenablog.com

f:id:plum_0417:20231110001918j:image
f:id:plum_0417:20231110001956j:image

昨今、テレビや新聞などにおいて、地方ローカル線の窮状があちらこちらで報じられています。そうした時節柄の上で、「伊豆箱根鉄道の経営状況が良くなく、交通系ICカードの導入に向けた設備投資をしたくてもできない」などと考える方もいらっしゃるかもしれません。確かに、伊豆箱根鉄道のホームページにアクセスし、有価証券報告書などの資料を見てみると、コロナ前から経営状況はあまり良くない状況です。しかしながら、グループ会社の伊豆箱根バスや伊豆箱根交通(タクシー)では交通系ICカードによる乗車が可能になっていること、また、そもそも同じ伊豆箱根鉄道でも、神奈川県を走る大雄山線交通系ICカードは対応していることを踏まえると、経営状況による問題であるとはするのは、少し違うのではないかと考えます。

plumroom-0417.hatenablog.com

plumroom-0417.hatenablog.com

それなら何が考えられるのか。もっとも、それだと断言できるものを見つけることは容易ではなく、いくつか考えられるのかもしれませんが、筆者が一番ありうる要因であると考えるのが、東京方面から直通してくる特急踊り子の「修善寺編成」です。東京や横浜と伊豆半島を結ぶ特急踊り子号は、主なルートは熱海から伊豆半島東海岸を走って下田に至るものですが、そちらに付属編成を連結し、熱海駅から先は東海道線を通って三島駅に向かい、そこから駿豆線修善寺を目指す列車も存在します。

そこで浮上するのが、冒頭でも触れた「沼津Suica問題」の原因である「SuicaTOICAの境界跨ぎ」です。熱海駅を越えてSuicaエリアとTOICAエリアの両方を走ることになるため、熱海駅を越えて交通系ICカードを利用して踊り子の修善寺編成に乗車した場合、下車駅の改札窓口や精算機などにてカードの処理を行う必要があります。三島駅沼津駅であれば、窓口で処理や案内を行う駅係員がいるため、混雑状況により長時間待つ場合もありますが、何とか駅から出場できる状況にあります。

一方、必ずしもそうとはならなさそうなのが駿豆線内の駅。特急停車駅は基本的に有人駅ですが、一部を除き駅にいる係員が少なくなっています。列車が到着した際はホーム上の安全確認のためにホームにいる場合もあり、改札窓口での対応ができないことも想定されます。仮に現在の状況下で駿豆線交通系ICカードに対応した場合、熱海駅を跨いでの利用ができないにも関わらず駿豆線内まで交通系ICカードで乗車してしまう人が続出し、改札窓口などでの処理が多数発生してしまうことも考えられます。現状では駅における対応が難しいということが、駿豆線が未だに交通系ICカードに対応できていない大きな原因なのではないかと推測します。

この場合、「踊り子の直通が廃止されればハードルが低くなる」という見方もできるかもしれません。しかしながら、明確な数値を示すことはできませんが、踊り子の修善寺編成の利用状況は存続が危ぶまれるほど悪くなく、満席ということはなくとも、それなりに利用している人がいる状況です。また、185系からE257系への置き換えを経ても、当時はこれを機に廃止されるという見方も広まりましたが、駿豆線に入線できる5両編成が用意され、今なお運行され続けています。また、「列車の行き先には地域の宣伝効果がある」などという意見もあるようで、直通列車を廃止することは容易ではないのかもしれません。

f:id:plum_0417:20231110001354j:image

前述の通り、在来線では現状不可能ではあるものの、ネット予約サービスを利用して東海道新幹線に乗車すれば、TOICAエリアの外からも交通系ICカードだけで三島まで辿り着くことができるようになっています。また、JRの鉄道路線のみならず、伊豆箱根バスを含めた周辺のバス事業者も交通系ICカードを導入しており、地域の外からの来訪者だけではなく、地元住民においても交通系ICカードが普及してくることも今後十分想定されうることです。早朝から終電まで毎時3~5本程度の運行本数で、観光から通勤通学、その他日常生活において、十分便利に使える路線でもあるため、こればかりは本当に惜しいポイントだと感じるばかりです。切符を買うことなく、手持ちのSuicaでスムーズに乗ることができるようになったら、例えば伊豆長岡の温泉にも今まで以上に軽率に行きったり、ラッピング電車にも頻繁に乗ったりするようになるかもしれず、そうした日が待ち遠しい限りではありますが、自分で思い浮かべている以外の事情もあってか、それも現状難しいのかなとも考えている次第です。

*1:伊豆箱根バス東海バス富士急シティバス

*2:正確に言えば株式会社パスモによる発行